[書評] 神田川デイズ

都内の大学を舞台に交錯する、さえない学生たちのキャンパス・ライフを描く短編たち。
 

神田川デイズ (角川文庫)
KADOKAWA / 角川書店 (2014-09-16)
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大学に入りさえすれば「なにか」が自動的に手に入るのだと思っていた。いや、実際、自動的に手に入る人だっているんだろう。僕がアンラッキーだった、ということも要素のうちのひとつであることは疑いようがない。けれども、それ以上に、僕がなにもしなかったということがある。銀杏の木の下でただ落ち葉に埋もれていくごとく、劣等感に埋もれて、ひたすら動かないでいた。三年間。でも僕は、まだなんにもしていない。

 
自分自身の学生時代の不完全燃焼ぶりをほじくり返されるような恥ずかしさを覚えつつも、登場人物の一人ひとりに共感を覚えてしまう群像劇。
筆者の豊島ミホは、大学の後輩にあたる綿矢りさと比較されるのがイヤで暫く学歴を非公開にしていたとされるが、個人的には、綿矢文学よりもずっと人間のリアルに迫っているように思える。他の作品も併読したい。

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