[コラム] 理想のかたち

この記事の所要時間: 145

若い友人から、会社に反りの合わない、感じの悪い同僚がいるという話を聞かされたことがある。
 
その友人は既婚で子持ち。傍目には、いい男捕まえて都心に持ち家、子供まで出来て、更に大企業の本社採用で総合職の仕事を続けているというのは、若い女性の一種の理想形なのだろう。それを地で行く彼女を僻んだり、足を引っ張ろうとする同性がいても不思議じゃない。反りが合わないんじゃなくて、初めからつっかかることが目的だとしたら旨くゆくわけがない。
 
だが、我が家もそうだけど共働きの家庭はそんなに理想的なものではない。専業主婦にならないのは、多くの場合経済的な理由に迫られてのことだし、働きに出れば子供を保育園や学童に預ける必要があるけどその確保も大変。入園後も、病気にでもなれば両親のどちらかが仕事を放って迎えに行く必要がある。
 
我が家では家事は分業で、毎朝の洗濯や皿洗いや床掃除は僕がするけど、妻にも働いてもらっている以上当然のことだし、仕事を抱えながら子供に朝晩の食事をつくり勉強の面倒も見て寝かしつける妻の労力の方が遥かに大きいし、自分の時間なんぞ妻には事実上ない。表面しか見ない傍観者に、夫婦揃って疲弊した生活を妬まれても困ってしまうというのが本音ではあるまいか。
 
一方で、人は自分にないものに憧れるものであって、あの人には家族がいて自分にはいない現実に埋まらない差異を感じてしまうのもまた事実だと思う。僕自身も単身赴任の頃は、誰もいない真っ暗な部屋に帰るのは慣れなかったし、そんな生活がいつまで続くか分からないまま、仕事を続け歳月を重ね、この先どれだけ孤独に耐えなきゃいけないのか、という暗澹たる気持ちが大きくなってゆくとしても不思議ではない。
 
それが嫉妬の炎に化けるのは困りものだけれども、同じ事象であっても眺める人によってその姿は全く違ったものになり得ることを、我々一人ひとりが認識しておくべきなのかも知れない。

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n-mizuno
1976年東京生まれ。小学校から12年間男子校で過ごした後、ほぼ女子校状態の大学に進学。就職してからは、アフリカ、ロシア、モンゴル、東南アジアを駆けずり回って海外営業にいそしむ。自称・日仏英伊クアッドリンガル。

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1976年東京生まれ。小学校から12年間男子校で過ごした後、ほぼ女子校状態の大学に進学。就職してからは、アフリカ、ロシア、モンゴル、東南アジアを駆けずり回って海外営業にいそしむ。自称・日仏英伊クアッドリンガル。

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