[書評] ものづくり魂

この記事の所要時間: 148

ソニー創業者、井深大が本田宗一郎について語った『わが友・本田宗一郎』と盟友・盛田昭夫との対談『井深大・盛田昭夫 日本人への遺産』を再録し、更に新たに見つかった別の井深・盛田対談を併録した一冊。
 

ものづくり魂――この原点を忘れた企業は滅びる
井深 大
サンマーク出版
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本田さんはこう言っておられますが、私もおおいに賛同するところがあります。
「需要があるからつくるというのはメーカーではない。メーカーはパイオニアである以上は、あくまでも需要をつくり出すものである。だから未知にいどんでいるはずだ。未知な製品を大衆に聞いて歩いたって答えが出っこないではないか」
(中略)
「社長の考えを聞けば、その会社の製品、経歴、将来がわかる」というのも本田さんの持論でした。技術者でありながら、技術よりもたいせつなのは人間の思想であって、考え方がしっかりしていれば、技術はあとからついてくるということも、言っておられました。

 
井深が引用する本田宗一郎の「人間の思想」を着実に実践し、商業的成功にまで昇華し得たのがスティーブ・ジョブス率いるアップルであり、自社の後継者たる出井伸之はDigital Dream Kidsの掛け声だけで終わってしまったという厳然たる事実に、我々は何を言えばいいのだろうかと考えてしまう。
 

盛田:しかし、我が社はハングリーなときのほうが一所懸命でしたね。
井深:うん、もうちょっとハングリーにならなきゃいけないかな。
盛田:満ちたりすぎて心配ですね。現状に満足しちゃいかん。
(中略)
井深:さっきソニーは運がいいと言いましたけどね、これからは運は期待できない。ほんとの実力が試されるだろうね。

 
読めば読むほど、現在のソニーの惨憺たる状況へのアイロニーばかりが眼についてしまうのだが、そうした事態が自社を含めた日本企業に起こりえることを、稀代の起業家たちには見えていたのだろうと感じずにいられない、味わい深い一冊。

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n-mizuno
1976年東京生まれ。小学校から12年間男子校で過ごした後、ほぼ女子校状態の大学に進学。就職してからは、アフリカ、ロシア、モンゴル、東南アジアを駆けずり回って海外営業にいそしむ。自称・日仏英伊クアッドリンガル。

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1976年東京生まれ。小学校から12年間男子校で過ごした後、ほぼ女子校状態の大学に進学。就職してからは、アフリカ、ロシア、モンゴル、東南アジアを駆けずり回って海外営業にいそしむ。自称・日仏英伊クアッドリンガル。

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