勝手にフランス文化再入門(2) フランス起源の単語

フランス語が語源の単語って、意外にも身近なところにあります。
 
ジャンル、クレヨン、コント、レジュメ、レストラン、アンケートといった、日本語として定着している言葉は実はフランス語。
日本ではブランド名になっているmaquillage(マキアージュ)は化粧を表す一般名詞。粉飾決算の隠語として用いられるのも日本語と同じというのは興味深いところです。
 
テレビドラマや映画で題名が出てくるまでの前段のシーンをアバンタイトル(最近では略してアバン)といいますが、これはフランス語のavant-titre(アヴァン・ティトゥル)が語源。なぜ仏英混合のカタカナ語が日本で定着しているのかはよく分かりません(英語で同じ意味を示すのはcold open)。
 
起業家を意味するアントレプレナーは、英語がフランス語のentrepreneurを借用して、英語にとってのカタカナ語として定着した、現代では稀な例かも知れません。米英のネイティブが、アントルプルヌールとフランス語式に発音することも少なくないのが面白いと思いますが、英語のenterpriseは起業というよりも「企て」という意味での一般名詞の意味合いが強いのかもしれません。
 
英文契約書で不可抗力のことをForce Majeure(フォルス・マジュール)といいますが、これまたフランス語です。Force Majeureは天災に限らず、戦争、暴動やストライキなど人災を含むことが特徴で、ルーツは1804年のナポレオン法典に遡るそうです。
 
協力体制を示す「コラボ」という表現は、英語のCollaborationを略しただけだと思うのですが、フランス語も同じ綴り(コロボラシオン)で、特にcollaboというと、第二次大戦中にナチス・ドイツに降伏・協力した勢力を指す言葉で、もちろん良い意味で使われることはありません。
なので、日本の若者がこの略語を気軽に使っていると、フランス語圏の人たちはギョっとしてしまうかもしれません。
 
腕時計のタグ・ホイヤーの”TAG”も実はフランス語です。
Techniques d’Avant-Garde(テクニーク・ダヴァンギャルド)は直訳すると「前衛的技術」の意で、サウジアラビアの大富豪アクラム・オジェが1975年に設立した投資・商事会社。現在は子息のマンスール・オジェ(サウジとフランスの二重国籍を持つ)が率いています。
TAG社は1985年にスイスの時計メーカーHeuer(ホイヤー)社を買収してタグ・ホイヤーと改称、世界的な高級ブランドに成長させました。現在ではタグ・ホイヤーブランドはLVMHグループに売却されましたが、TAG社自体はルクセンブルグ国籍の投資会社として存続しています。
蛇足ながら、アクラム・オジェはアラブの武器商人として財を成したとされる人物なので、「前衛的技術」に込められた意味に気づくとゾクっとするものを感じてしまいます…
 
(つづく)
 
 
【転載元】
Frago95 上智大学外国語学部フランス語学科1995年入学生のサイト
http://frago95.sympathique.org/2018/04/culture-2/
 

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