就活概論 (16) グループ・ディスカッション

時々、面接とは別に、受検する学生同士であるテーマを決めてグループ・ディスカッションを行う場合がある。
 
これはひとつには、コピペ問答を排除してその人の受け答えの姿勢を見たいという企業側の思いがあるのだと考える。俺も何度か面接官を務めてきて、学生さんたちが、テープレコーダーのように、覚えてきた台本をよどみなく読み上げるようなのを見てきてガッカリしたことが幾度と無くあるから。
 
もうひとつ重要なことは、論理的な思考ができるかということ。
グループディスカッションは、そのテーマに沿った最適解を出すことが目的ではない。 賛成・反対・あるいはどちらでもない自分なりの結論を選んで、結論に至る理屈(ロジック)の積み上げ方が間違っていないことが大事。
 
面接やエントリーシートで述べる内容についても全く同じことが言えるんだけど、当てずっぽうな推論や自分勝手な夢物語だけを開陳すれば間違いなくアウト。自分の知っている物事だとか、世間一般に起きている事実を組み立てて、それに基づいて考えた仮説なり意見が論理として破綻していないことが必要。 言い方を変えると、破綻しないストーリーを述べる為、しっかり企業研究をするなり、新聞を読み込むなりして、その会社や業界、世界情勢に関するネタを拾っておく必要があるのです。
 
俺が就活していた頃、あるメーカーでグループディスカッションがあり、テーマは「会社の英語公用語化について」だった(当時としてはかなり先進的だったと思う)。約6名で1組だったけど、こういう場では大体「英語化したらこんなに素晴らしいことがある」的なことを言って場をリードする人が出てくる。そして何となく付和雷同になって英語化のメリットを各人が賞賛する流れになっていた。
そこで、しばらく発言を控えていた俺が
「自分が留学していた欧州某国では、大学に通うレベルの若者は概ね英語が上手。でも、英語ができるというだけで失業率は改善しないし、突然経済大国になるわけでもない。英語が理解できることは素晴らしいが、会社の仕組みを変えるだけの労力に見合う施策なのか、本当に会社全員がやるべきことなのかどうかを見極めないと経営資源の無駄遣いになるおそれがある」
と口にしたところ、全員が押し黙ってしまい、その後は俺が議論をリードすることになった。
 
ここで見て取れるのは、上っ面の事象しか見ない連中は会社の意見に適当に賛成して、賛成の理由を適当に集めてきているだけ。これに対して俺は、留学という自分の経験に基づく事実を土台にして、自分の考えを積み上げた。そして、その上で、会社の発展の為にどうしたらいいのかという議論の本質に迫ったことが、周囲を黙らせる決定打になったのだと思う。
 
グループディスカッションのテーマは、会社の発展なり成長に関係する事柄が多いと思うので、その観点を失っては意味がないと思う。いくら理屈が通っていたとしても、会社の存在理由を危うくしかねないような結論は導くべきではない。例えば、自動車会社を受検しているのに「若者のクルマ離れは仕方ない」などとと言うべきではないということ。
 
(つづく)

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