[書評] ソニー本社六階

新入社員当初から経営企画部配属という、一般的な企業からすれば異色とも思える経歴の筆者が当事者として体感したソニー転落の必然。
 

ソニー本社六階
ソニー本社六階

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竹内 慎司
アンドリュースプレス
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今では誰もが知ってしまっている、コロムビア・ピクチャーズの巨額買収とその後の損失垂れ流しをはじめとする夥しい投資の失敗… トップの暴走を誰も止められず、あまつさえ自らの保身の為、案件の成否そっちのけでゴマスリに勤しむ取り巻きたち…
 
筆者は当時の社長(作中なぜか実名は伏せられているが、それが大賀典雄であることは自明)の失政を巡る環境を、北朝鮮になぞらえて描いてみせる:

組織の長を神格化し、その名誉を守ることが組織全体の目的と化してしまう現象は日本、いや儒教思想の影響を色濃く受けた極東の国々に共通して起こりうることなのかもしれない。
スターリニズムを二十一世紀に生きる極東のかの共和国と比較して考えてみると、そのような状況を生み出す要因が見えてくる。
かの共和国の独裁制を磐石ならしめていたのは、三つの要素があったと思う。それは首領の神格化とパージへの恐怖、そして情報のコントロール、というよりも遮断である。
2003年に体制が崩壊した中東の共和国に比べて、神格化と情報の遮断の要素が大きいといえるだろう。そして、当時のソニーにはこの三つの要素がしっかりとそろっていた。

 
この形容がどこまで正確なのかは判断のしようがないが、誰もが羨んでいたピカピカの電機メーカーの中枢が、ゆっくりと、しかし確実に蝕まれてゆくさまは、現在我々が知っているソニーの姿にハッキリとつながってゆく…
 
どんな日本企業でも起こりえる、いや今まさに起こっているかも知れない出来事が綴られる、単なる告発本に終わらない一冊。

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