2000年前後のドットコム・ブームはすっかり過去のものですが、イベントや新商品等々、何かにつけウェブサイトのアドレスが登場するのは現在ではむしろ当たり前になっています。
この独自のアドレス(ドメイン名)を個人で取得するにはどうしたらいいのか、どうやったら運用できるのか、そもそもドメイン名ってどういう仕組みで表示されるのか、を踏まえて解説したいと思います。
1) ドメイン名とは
もともとインターネット上の住所は、IPアドレスという数字の羅列(133.12.132.1とか)で表されるものです。でも、これでは覚えにくいので、アルファベットで表示できたらいいよね、ついでに企業・組織・学校みたく分類できたらいいね、国名も表示できたらいいよね、という発想から、ドメイン名という仕組みが出来上がっていきました。
ただし、インターネットの通信はドメイン名のアルファベットではなく、従来からのIPアドレスで行われます。IPはインターネット・プロトコールの略で、インターネットの通信手法を指します。ですから、IPそのものを変えることは出来ません。IPアドレスと、アルファベットで表されるドメイン名とを互いに変換する仕組みを備えることで、アドレスが正しく表示されるようになっています。
7桁の郵便番号を入れると住所が出てくる、反対に、住所を入れると郵便番号が出てくる仕組みだと思っていただければ良いかも知れません。
数字とアルファベットの変換は、その名もドメイン・ネーム・サーバ(DNS)というサーバが請け負っています。DNSは、ルート・サーバと呼ばれる、全世界の変換を司る大元のサーバのほか、ネット上のそこかしこにあるウェブサーバに備わっていて四六時中変換作業を行っています。蛇足ながら、ネット中に「DNSエラーのためページが表示されません」と出てきてウェブが見られなくなるのは、どこかのDNSがおかしくなって変換が出来ない状態を指します。
ドメイン名は各国に等しく分け与えられるものの、その運営は国任せ。米国のように自国民以外の誰でも登録できる国もあれば、日本やフランスのように国内居住者に制限している国もあります。また、ツバルのように自国のドメイン名(.tv)を米国にリースして外貨収入源にしている国もあります。
2) ドメイン名のメリット
ドメイン名を持つことのメリットは、やはりウェブサイトやブログが分かりやすい名前になるということでしょう。メールアドレスにしても同様です。[email protected]とか、[email protected]といったアドレスになれば覚えやすく、見た目のインパクトとして目を引くことは間違いありません。
また、家族やサークル、グループなどで同じドメイン名のメールアドレスを持っているのは統一感があるだけでなく、卒業・転職・転勤などを経ても変わらないアドレスを持っていられることは大きなメリットと言えます。
3) ドメイン名の取得
ドメイン名というのは、基本的に誰でも自由に取得することが出来ます。
国によって一定の規制を受ける場合がありますが、それは例えば日本だと”.co.jp”は日本で登記された会社組織しか取得できない、”.jp”は日本に住所を持つ個人又は団体でないと取得できない、といった事柄です。
ドメイン名の中で一番ポピュラーなのはアメリカのドメイン(.com, .net, .org, .info)で、登録業者間の競争も激しいので安い(年額10ドル以下)です。ただし、世界中の人が取得しに来るので短い名前はあらかた取られてしまっています。
日本のドメイン(.jp)は登録料が高い(約3,000円)欠点がありますが、敷居の高さ(上述の制限+値段)のおかげで、転売目的でとりあえず押さえておくような人が少なく、割合に空きも多いです。
ドメインの登録料はおしなべて年間数十ドル、1日あたりにすれば5〜10円ですから、長い目で見ればさしたる出費ではないと思います。
僕自身は、バリュードメインという業者を長く使っています。最近GMOグループ傘下に収まりましたが、長年独立系でした。様々な国のドメイン名を扱っています。
4) ドメイン名の紐つけ
先に述べた通り、ドメイン名は持っているだけではダメで、ネット上の番地であるIPアドレスに紐つかなければいけません。インターネットの黎明期は、ひとつのIPアドレス(サーバ)にひとつのドメイン名がつくものでした。IPアドレスの読み替えとしてドメイン名が生まれたのですから当然といえば当然なのですが、ドメイン名が便利になってくると、名前の数だけIPアドレスを付したサーバが必要ということになります。これでは非効率なので、バーチャルドメインと呼ばれる仕組みが生まれました。その名の通り、一つのサーバにいくつものドメイン名を紐つける方法です。いわば集合住宅のようなものです。
旧来の、ひとつのサーバにひとつのドメインを持つようなサーバを「専用サーバ」、集合住宅型のサーバを「共用サーバ」といいます(厳密にはいろいろ違ったりもするんですが、ここでは大まかな理解の為にこのように定義します)。いわゆるレンタルサーバと呼ばれる、個人でも手軽に運用できるサーバのほとんどは共用サーバです。
ここで疑問がわく人がいるかもしれません。
「わざわざレンタルサーバ業者にお金払わなくても、俺のプロバイダから支給されてるウェブスペースや、大学でもらってる個人用ウェブサイトだって共用サーバなんだから、ドメイン名を紐つけられるんじゃないの?」
結論を急ぐと、技術的には可能であっても、サーバの管理者が応じてくれる可能性は低いです。というのも、IPドメインに紐つけるためには、自分のドメインを登録する為のDNSが2箇所必要(プライマリ、セカンダリといいます。二重にしておくことで、片方がおかしくなっても名前/数字の変換を正しくしてくれるようになっています)で、かつ、サーバ側で「このドメイン名はうちのサーバのこの場所で表示しますよ」という設定をしておく必要があるからです。
DNSは、ドメイン登録業者が無償提供してくれる場合もありますが、サーバ側の受入設定は自分ではできません。そしてサーバの管理者は、個々の利用者のカスタム設定にお付き合いするのを嫌がりますし、規約上カスタム設定を禁じている場合が殆どです。言い換えれば、レンタルサーバ業者はカスタム設定やDNSの面倒を見てくれる点にこそ存在理由があるのです。
5) レンタルサーバ
レンタルサーバ業者は、共用サーバでのウェブスペース(ホームページの公開領域)、メールサーバ(独自ドメインでのメールアドレスを作成可能)、DNSの無償提供(プライマリ、セカンダリ)をしてくれます。最近は業者間の競争が激しく、月あたりの使用料が100円~200円といったものも珍しくありませんが、以前新聞でも話題になったように、レンタルサーバのデータが全削除されて復旧できなくなる事故(いわゆるファーストサーバ事件)も発生していますので、予算と信頼性(運営会社の評判)を見極めて選ぶことが重要と考えます。また、ブログなどのプログラムを運営するには、データベース(ブログのデータ管理に必須)を利用できるかどうかも選定のポイントになるかと思います。僕自身は、さくらインターネットという業者と契約しています。
6) 手軽なドメイン転送
上述のように、ドメイン名の取得・運用はややとっつきにくい面もありますが、仕組みが分かってくると、設定の手順や業者にお金を払う理由もスッキリしてくるのではないかと思います。
いずれにせよ無料とはいかない手順が多いのですが、ドメイン登録業者によっては、サービスとしてメイン名やメールアドレスの転送を無料で行ってくれるところもあります。
すなわち、http://www.domain.jp/ と入力すると、自動的に http://www.provider-ner.or.jp/~username/ が表示されたり、[email protected]宛のメールアドレスが自動的に [email protected] に転送されるというものです。
こうしたサービスのある業者でドメイン名を登録すれば、煩わしいDNSやサーバの設定もせず、またレンタルサーバ業者に費用を払うことなく、擬似的にドメイン名の運営ができるので、最初のとっかかりとして検討してみるのも一興かもしれません。
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