(初出:nmtalks)
「誰某は感じの悪い奴」って風説を信じて実際に会ってみたら全然違って、明らかに風説がウソだと分かっても、最初の印象が拭いきれないというのは間々ある話。これは自分の間違いを頭が受け入れないからだろう。
風説を広める人たちは、巧みに事実をコントロールする。最初の印象操作が重要だから、攻撃対象の欠点だけを増幅する。その欠点自体はウソではないけど、それだけに周囲に吹き込めば忽ち拡散してしまう。吹き込まれた側はその情報を基に自分で判断する。誰かの言いなりではなく、自分の価値基準で決めたことは仲々覆らない。自分で決めたことが、実は誘導されていたとは信じたくない。信じたくないから、益々自分の決定に固執する。かくして洗脳は確実に行われる。
洗脳する側は、決めつけという印象を排する為に、吹き込む情報に自分の主観を入れない。客観とか普通とかいった表現がスキだ。でも、主観の入らない話題をわざわざ言い触らすか?普通だとしたら、拡散するまでもなく皆知ってないか?
「〜という声が上がっている」なんていう、語り手の主体のない言説はあり得ず、そこには率先して声を上げる人物がいると考えるべきだろう。自分の意見なら堂々と主張すればいいのに隠れてやるのは、洗脳だと悟られてはいけないからだ。
考えてみれば、奇怪な言説を広める人たちの本質は「俺が一番だから俺の言うことに従え俺より先を歩くな」という矮小な心根でしかあるまい。ひとの魅力を妬む輩が相手を地盤沈下させて満足を得ようとするのだ。そういう輩にだって欠点だけじゃなく魅力もある筈だけど、逆もまた然りで、欠点しかない人なんて存在しない。だから他人を全肯定・全否定なんて出来っこない。でも洗脳者は何が何でもそれを強いてくる。評価の多様性を認めず、何が何でも一色に塗りつぶそうと繰り出されるマインド・コントロールに立ち向かうには、自分で判断するだけの見識を備える必要がある。
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